第2回プライマリケア連合学会学術大会に参加しました

 2011年7月2-3日にロイトン札幌で開催された、第2回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会(草場鉄周  大会長)に道南勤医協から医師5名で参加してきました。

学会HP:http://www.ibmd.jp/jpca2011/

 2010年の第1回学術大会にひきつづき、後期研修プログラムの紹介を行いました。

3名が演題を発表

 道南勤医協からは、江差診療所の大城忠医師、函館稜北病院の堀口信医師、さらに月2回外来支援をいただいている北広島大曲ファミリークリニックの木田史朗医師が演題を発表しました。3名の抄録を紹介します。

困難事例の検討を共有する地域保健研修

道南勤医協江差診療所 大城忠

 南檜山は北海道の中でも医師数の最も少ない地域のひとつである。

 当診療所も厳しい医師体制を理由に2008年入院機能を廃止した。

 入院機能廃止にともなって地域住民に示した展望は①地域の医療機関、介護施設との連携②在宅医療③地域医療を守る地域活動などの課題推進とあわせて④青年医師とともに研修し発展する医療を挙げた。

 約3年間の間に、6名の初期研修医が地域保健研修に訪れた。研修期間は約1週間から6週間であった。

 医師は所長1名の入院機能をもたない小規模診療所での研修である。

 具体的に①地域の医療・介護施設の見学研修②その時期に直面する診療所の困難事例の課題検討を担当する、この2点を重視し、これらを通して地域全体の医療・介護の現状と課題を把握してもらうように工夫した。

 具体的に例えば以下のような事例である。

 ①隣接都市の専門病院で治療を受けた多発性骨髄腫終末期患者の在宅での看取りの実践②自宅で死にたいという心不全末期患者と反対する家族③高齢の配偶者が唯一の介護者である大腿骨骨折後の高齢者の退院先の検討④高齢・寝たきり患者の胃ろう造設の適応

 これらはいずれも当診療所自体にとっても解決・実践が困難であり、その時々で懸命に取り組んでいる事例であった。

 初期研修医は課題解決の過程で、旧態依然とした診療所に新しい知識・考え方を吹き込み、刺激した。私を含めて診療所職員は研修医から多くを学んだ。

 一方、研修医は事例を深めるために、多くの職員、地域の人たちと懇談し、積極的に地域に溶け込んだ。いずれの研修医も大いに悩み、主体的に努力した。各研修医は時間が足りず、充実したと感想を述べた。

 困難事例を共有し解決していくことは双方にとって意義のある研修と考えた。さらに質の高い研修を実践するために討議に参加する目的で報告する。

PEG実施のガイドライン

道南勤医協函館稜北病院 堀口信

 当院では、2002年から2009年まで64例にPEG(経皮内視鏡的胃ろう造設術)を実施した。一方で近年、PEGの是非がマスコミでも取り上げられている。当院の医療倫理委員会は、PEGについてのアンケート調査を、職員とPEGを受け入れた家族に実施した。その結果をもとにPEG実施のガイドラインを作成したので報告する。

【調査方法】職員168人に対して、PEGの目的、PEGを延命処置と思うかなど用紙にて質問した。PEGを受け入れた家族19件には、その目的、延命処置と思うか、PEGをつくってよかったかなど用紙にて質問した。

【調査結果】PEGの目的について、職員の52%が「QOL向上」、45%が「介護負担の軽減」、38%が「介護施設に転院しやすい」を選んだ(複数回答可)。同じ質問で、家族の39%が「介護負担の軽減」9%が「介護施設に転院しやすい」、4%が「QOL向上」を選んだ(複数回答可)。PEGを延命処置と思うかとの質問に、職員の13%が「おおくはそうである」、52%が「ときにはそうである」を選んだ。一方、家族の35%が「おおくはそうである」、26%が「ときにはそうである」を選んだ。家族のPEGに対する評価は「とてもよかった」26%、「よかった」44%、「どちらともいえない」30%、「大変だった」0%だった。

【ガイドラインの概要】経口摂取が長期的に困難と判断された場合、PEG、点滴栄養、経鼻経管栄養といった栄養法の特徴を説明し、ご本人もしくはご家族に選択していただく手順と留意事項を示した。その上で、とくにPEGを選択する場合は、より丁寧な説明と同意書作成を明示した。栄養法の選択にあたっては、本人の意志もしくは推定される本人の意志を最大限尊重するよう定めた。PEGを選択したあとの、存命期間や、おこりうる介護の負担、受け入れ可能な施設を実績にもとづいて説明することとした。

NEJM症例検討会コーパスで見る米国臨床医学の変遷

大曲ファミリークリニック 木田史朗

【背景】1924年からNew England Journal of Medicine誌に掲載されている”Case records of the Massachusetts General Hospital”(以下CPCと略)は、日本でも多くの施設の文献抄読会で利用されてきた。しかし、シリーズ全体の俯瞰的な検討は稀だった。

【目的】CPCで使用された語彙の特徴度から、ここ20年の米国医療の変遷を推察する。

【対象】1990年1月4日号から2011年3月31日号までの905回分のCPCを対象とした。

【方法】上記対象のうち2000年12月28日号までの494回分を参照コーパス、2001年1月11日号からの411回分を標的コーパスとし、対数尤度比法にて標的コーパスの単語の特徴度を算出した。解析には、大阪大学言語文化研究科の今尾康裕氏によるMac OS X向けコンコーダンサーCasualConc1.8.3 β〔1〕を用いた。

【結果と考察】標的コーパス、参照コーパスの「異なり語数」(type)、「延べ語数」(token)、標準化Type/Token比(STTR)はそれぞれ、28,766、 35,728、1,533,091、 2,379,644、42.20%、 42.05%であった。標的コーパスの特徴度上位10語は、cancer、her、she、mutation、management、risk、minute、his、harris、figureであった。特徴度下位10語は、ml、film、percent、mmol、100、fig、liter、ray、demonstrate、theであった。以上から臨床腫瘍学の進歩、リスクファクター疾患の増加、患者の人権の拡大、国際化などの変化を推察した。

【結語】CPCで使用される語彙には、医療界内外の時代精神が反映されている。

 木田医師の発表内容は、同医師のブログでも紹介されてますので、ぜひごらんください。

木田医師のブログ ランチョン@稜北「 xより始めよ」:

http://wat-weet-ik.blogspot.com/